
生理を遅らせるピルとは、『生理日移動』を行う際に使用する薬で、主に低用量ピルまたは中用量ピルが用いられます。
低用量ピルは避妊目的として知られていますが、イベントや旅行などに合わせて生理日を調整する目的でも使用可能です。
しかし「何日前から用意するのか」「体に影響はないのか」といった不安を感じる方も少なくないでしょう。
この記事では、生理を遅らせる方法・早める方法の違い、それぞれのメリット・注意点について解説します。
生理日を移動するときの服用方法とスケジュール一覧

ここでは28日の生理周期、生理期間を5日、1ヶ月を28日とする場合の生理移動について紹介します(個人差があります)。
イベントが生理予定日と重なると仮定した場合の、スケジュールと特徴を一覧にまとめました。
| 遅らせる場合 | 早める場合 | |
|---|---|---|
| 受診日 | 生理予定日の1週間前まで | 前回の生理開始日から5日以内 |
| 服用開始 | 予定日の約5日前から | 前の生理開始後5日以内 |
| 服用終了 | 生理を避けたい期間の最終日まで | 希望日の2〜3日前(最低10日間服用) |
| 生理が来る時期 | 服用終了して2〜3日後 | 服用終了して2〜3日後 |
| 使用するピル | 中用量ピル | 低用量ピル |
| 主な特徴 メリット | ・イベント直前でも対応しやすい・服用中は生理が来ない | イベント中に服用が不要のため副作用の心配がない |
| 注意点 デメリット | 吐き気や頭痛などの副作用が出やすい | ・前周期から準備が必要・生理がこない場合がある |
生理を遅らせる場合の具体例とポイント
2月15日の予定日を20日に遅らせたい場合は、以下の通りの流れになります。
- 2月8日までに受診
- 2月10日から服用を開始
- 2月18日まで服用
- 2月21日頃に生理開始
- 2月26日頃に生理終了
生理を遅らせられる限度は、元の予定日から7〜10日後くらいまでのため、2月10日からの服用開始の場合、2月25日くらいまで遅らせることが可能です。
それ以上は継続して服用していても生理が来るため、副作用のリスクを避ける意味でも、2月25日以降は服用を中止します。
生理を早める場合の具体例とポイント
2月28日の予定日を2月20日に早めたい場合は、以下の通りの流れになります。
- 前の生理は2月1日。2月5日までに受診
- 受診日を2月3日として、その日のうちに服用を開始
- 最低10日間服用する
- 移動希望日の3日前の2月17日に服用終了
- 2月20日に生理開始
- 2月25日に生理終了
前回の生理から数えると普段より期間が短いため、軽い生理が来ることになります。
移動予定の前の生理の時点から準備を始める必要があるため、前の周期の生理が始まったらすぐに受診することが大切です。
遅らせるときと早めるときにピルに違いがある理由
生理日を移動する際は、低用量ピルまたは中用量ピルを使用します。
その中でも、生理を遅らせる場合には中用量ピル、生理を早める場合には低用量ピルあるいは中用量ピルを使用するのが一般的です。
中用量ピルは低用量ピルと比べると、女性ホルモンであるエストロゲンの含有量が多く、効果がはっきりしている特徴があります。
一方でホルモン量が多いために、吐き気や頭痛といった副作用の頻度も上がりやすい性質を持ちます。
低用量ピルでも生理を遅らせることは可能ですが、子宮内膜が剥がれ落ちないよう維持するためには、多くのホルモンが必要です。
そのため、生理を遅らせる目的ではホルモンの配合量が多い中用量ピルが広く選ばれています。
ただし、中用量ピルで副作用が出やすい方などの生理移動に関しては、低用量ピルが選択肢になることもあります。
低用量ピルで生理日を移動する飲み方

低用量ピルを使用して生理を早める具体例を紹介しましたが、低用量ピルで生理を遅らせる場合は、中用量ピルと手順が異なります。
また低用量ピルを普段から継続して服用している方が、生理を移動させたい場合の方法についても併せて紹介します(個人差があります)。
低用量ピルで生理を遅らせる方法
低用量ピルで生理を遅らせたい場合、普段から継続して服用しているという条件が必要です。
通常は21日間服用して7日間の休薬期間に入り、その間に生理がきます。
しかし生理を遅らせたい場合、休薬期間には移らず、そのまま新しいシートからピルの服用を続けます。
そのままイベント終了まで服用を続け、その翌日から休薬期間を7日間設けると、その期間中に軽めの生理がきて、休薬期間の後は普段通りの服用を再開する流れです。
低用量ピルで生理を遅らせる場合の具体例とポイント
以下の条件で低用量ピルで生理を遅らせる場合の、具体的な流れを紹介します。
- 28日の生理周期で生理期間は6日間
- 1ヶ月を28日とする
- 生理予定日は2月28日
- 前回の生理は2月1日から2月6日
- 移動希望日は3月9日まで
以上の条件で低用量ピルによる生理日移動を行って遅らせる場合の、具体的な流れは以下の通りです。
- 前回の生理終了日は2月6日
- 2月7日から服用開始
- 21日間服用を続ける
- 翌日2月28日以降は休薬に入らず新しいシートから服用継続
- そのままイベント終了日の3月9日まで服用を継続
- 3月10日から休薬期間に入る
- 休薬期間中に軽めの生理が来る
- 7日間の休薬期間を終えて通常通りの服用を再開
低用量ピルには『1相性』と『3相性』という種類があり、どちらを普段服用しているかによって以下のように服用方法が異なります。
| 種類 | 商品名 | 服用方法 |
| 1相性 | マーベロン・ファボワールなど | 新しいシートの1錠目から服用生理日移動 |
| 3相性 | トリキュラー・ラベルフィーユ・アンジュなど | 新しいシートの12錠目から服用 |
| 3相性 | シンフェーズなど | 新しいシートの8錠目から服用 |
自身の服用しているピルを確認したうえで移動を行いましょう。
普段飲んでいても生理日を移動する場合は医師に相談
普段から低用量ピルを服用している場合でも生理日移動は可能ですが、自己判断で行わずに、服用方法を確認するためにも担当の医師に必ず相談してください。
ピルを服用しているタイミングを変えることになるため、適切なアドバイスを受ける必要があります。
また、自己判断で進めると失敗した際の対処法がわからなかったり、トラブルになったりする可能性もあります。
移動したい生理日の約1ヶ月前くらいを目安として、普段低用量ピルを処方している医師に服用方法を相談することが大切です。
また、休薬期間を挟まずに次のシートに進む必要があるため、服用中の低用量ピルが少なくとも2シートは必要になります。
特に生理を遅らせたい期間が10日以上と長くなる場合は、体調管理の面からも事前に医師の診察を受けることが推奨されます。
生理が移動できる仕組み

ピルがどのようにして生理を移動させるのか、その仕組みを理解するにはまず「生理がどのようにして起こるのか」を理解することが必要です。
ここでは、ホルモンがどのように作用して生理の時期を移動するのかについて紹介します。
子宮内膜が剥がれ落ちるタイミングを移動する
女性の身体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンによってコントロールされています。
一般的に生理では28日の周期で両者の分泌量が変動し、それに影響を受けて子宮内膜が厚くなったり剥がれたりして生理が起こる仕組みです。
生理を遅らせる場合は、ピルによってホルモンを追加で補充し続けることで、妊娠中のようなホルモンバランスに調整し、子宮内膜を維持させます。
生理を早める場合は、短期間にホルモンを補充したあとに早めに服用を終了すると、人工的に子宮内膜が剥がれ落ちるという方法です。
このように、子宮内膜を維持したり剥がしたりするタイミングを女性ホルモンで調整することで、生理日の移動を可能にします。
生理日移動は体に危険ではない
ピルによって故意に生理日を操作することを体に悪いイメージとする方もいるでしょう。
しかし、出産の準備を整え、妊娠がないことで不要になった子宮内膜を体外に排出する働きは、ピルによる生理も自然の生理も変わりありません。
医師の指導のもとに一時的に生理をずらすことは、将来の妊娠への悪影響やその後の生理周期の乱れの原因にはならないとされています。
医師がそれぞれの体調に合わせて適切な範囲内で処方スケジュールを組むため、健康上のリスクを過度に心配する必要はありません。
ピルで生理を移動させるときの注意点

ピルによる生理移動については、移動の成功や失敗の他に、気を付けなければいけない点がいくつかあります。
ピルで生理を移動させるときに注意したい点を紹介します。
受診の際は必ず聞かれる項目がある
医療機関で処方するお薬を適切に選択するため、受診の際は以下の3つについて必須項目として質問されるケースが一般的です。
- 最後の生理の開始日
- 次回の生理の開始予定日
- 生理をずらしたい日(予定の入っている日)
医師はこれらの情報をもとに適切なホルモン剤を決定し、内服のためのスケジュールを組み立てます。
また、病気や喫煙歴、年齢や体型なども処方に影響があるため、普段飲んでいる薬や毎日吸っているタバコの本数なども申告しましょう。
ピルには副作用がある
ピルを服用する際は、飲み始めを中心にいくつかの一時的な副作用が生じる可能性があります。
ピルに見られる主な副作用の症状は以下の通りです。
- 不正出血
- 乳房の張りや痛み
- 吐き気・嘔吐
- 腹痛や頭痛
- 下痢
- 倦怠感・眠気
- むくみや一時的な体重増加
- 情緒不安定や気持ちの落ち込み
中用量ピルは低用量ピルと比べてホルモン含有量が多いため、副作用の症状が強く出る可能性があります。
また、非常に稀ではありますが、血管内に血のかたまりが詰まる血栓症のリスクが広く知られています。
服用中に以下のような症状がみられた場合は血栓症の初期症状が疑われるため、注意が必要です。
- 強い胸痛や腹痛
- 突然の息切れ・呼吸困難
- 激しい頭痛・目がチカチカする前兆のある頭痛
- 目がかすんだり視野が狭くなったりして見えにくい
- 舌がもつれる、しゃべりにくい
- 足の痛みやしびれ・むくみ・ふくらはぎがだるいなど
(ほとんどは片足だけに見られるが、両足に見られることもある)
これらの症状が見られた場合、ピルの服用を直ちに中止し、速やかに医療機関を受診してください。
その際は服用しているピルについて、必ず医師に申告してください。
ピルを飲めない人は婦人科に相談
低用量ピルの服用については、以下の場合に禁忌であることがガイドラインに記載されています。
- 低用量ピルの成分に対してアレルギーがある人
- 乳がん・子宮がんなど、悪性腫瘍にかかっている人
- 原因不明の不正出血がある人
- 静脈血栓症や肺塞栓症など、血栓症の既往歴がある人、またはリスクが高い人
- 35歳以上で1日15本以上喫煙する人
- 目がきらきらするなど前兆を伴う片頭痛のある人
- 重度の心疾患・肝疾患・血管疾患のある人
- 30分以上の大手術の術前4週間以内・術後2週間以内および長期の安静が必要な人
- 軽度を除く高血圧の人
- 糖尿病・脂質異常症に合併症がある人
- 耳硬化症の人
- 授乳中、妊娠中または妊娠の可能性のある人
- 産後6ヶ月未満の授乳中の人
- 初潮がまだの人
- 50歳以上または閉経後の人
参考:「日本産科婦人科学会 低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーデン配合剤ガイドライン」
また、中用量ピルの場合はさらに以下が追加されます。これらの方は、中用量ピルの使用によって、症状が再発したり悪化したりする恐れがあります。
- 妊娠中に黄疸や長期間の強いかゆみ、妊娠ヘルペス、耳硬化症の既往がある人
- デュビン・ジョンソン症候群やローター症候群など、生まれつき肝機能や胆道系に問題のある人
- 中性脂肪やコレステロールが高くて、薬などでうまくコントロールできない脂質代謝異常のある人
生理日移動は、ホルモンの調整以外に方法がないため、上にあるように健康上や体質・状況などを理由にピルが飲めない人は、医師に相談してみましょう。
治療ではないため保険適用外
ピルは月経困難症や生理不順など、病気の治療に使用される場合は健康保険の適用となります。
しかし生理日の移動は治療に当たらないため、保険適用外のため自費負担になります。
自由診療は医療機関が自由に金額を決められるため、同じ薬でもクリニックによって値段が異なります。
またその場合、生理移動に使用する薬代の相場は、中用量ピルが5,000円前後、低用量ピルは3,000円前後が目安です。
普段から低用量ピルを飲んでいる方でも、移動用の分や診察料は自費扱いとなります。
遅らせるか早めるかによって使用するピル数も変わるため、医師とよく相談して、かかる費用を確認しましょう。
まとめ
ピルを使用することで、大切なイベントや旅行などの予定に合わせて、生理日の移動が可能です。
直前でも毎日飲むだけで対応しやすい「遅らせる方法」や、イベント中に薬を飲まずに済む「早める方法」もあります。
どちらを選ぶかでお薬の種類や受診のタイミングが異なるため、自身の予定に合わせて選択することが大切です。
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生理日移動をご検討の際は、当院へお気軽にご相談ください。
