
ミレーナという名前を耳にしたことはあっても、「IUD(避妊リング)とは何が違うのか」「自分にも合うのか」と疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。
IUDにはいくつかの種類があり、ミレーナ(LNG-IUS)はその中でも黄体ホルモンを放出するタイプにあたります。
高い避妊効果に加えて月経トラブルの改善も期待できる一方で、装着前に知っておきたい注意点や副作用もあるため、正しい知識を持って検討することが大切です。
この記事では、IUDの種類や違い、ミレーナの仕組み・副作用・装着時の痛みなどについて詳しく解説します。
IUD(子宮内避妊用具)とは?

IUD(Intrauterine Device)は、子宮内に装着して妊娠を防ぐ避妊器具の総称です。
子宮内に留置することで、精子の働きを妨げたり、受精卵が着床しにくい環境を作ったりして避妊効果を発揮します。
一度装着すると数年間にわたり避妊効果が持続し、ピルのように毎日決まったタイミングで服用する必要がないため、飲み忘れによる避妊失敗がないことが特徴です。
また、近年は避妊目的だけでなく、月経困難症や過多月経の治療として使用されるケースも増加しています。
高村医院でも、患者様の症状やライフスタイルに合わせて、適切な避妊方法をご提案しています。
なお、IUDは以前はリング状のものが使用されており「避妊リング」と呼ばれていました。しかし、リング状のものは痛みが生じやすいことから、現在では使われなくなってきています。
IUD(子宮内避妊用具)の種類

IUDにはいくつか種類があり、素材や作用の仕組みに違いがあります。
現在日本で主流となっているのは「薬剤付加IUD(IUS)」であるミレーナです。
樹脂製IUD
樹脂製IUDは、薬剤や金属を含まない合成樹脂とプラスチックの素材でできたIUDです。
代表的な製品は「FD-1」で、1977年に承認されて以来、長く国内で使用されてきました。
子宮内に異物が留置されることで子宮内膜が反応し、受精卵の着床を妨げることで避妊効果を発揮するもので、避妊率は96%とされています。
(参考:不ニラテックス株式会社『子宮内避妊用具FD-1』)
銅付加IUD(Cu-IUD)
銅付加IUD(Cu-IUD)は、プラスチック製のT字型本体に銅線を巻きつけたタイプで、銅イオンを子宮内に放出することで避妊効果を高めた製品です。代表的な製品としては「ノバT380」があります。
銅イオンには精子の運動性を低下させる作用と、卵子との受精を妨げる作用があり、樹脂のみのIUDに比べて高い避妊効果が得られるのが特徴です。
薬剤付加IUD(IUS/ミレーナ)
薬剤付加IUDは、子宮内で黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を持続的に放出するタイプで、正式には「IUS(Intrauterine System/子宮内黄体ホルモン放出システム)」と呼ばれます。
日本で承認されている代表的な製品がミレーナで、2007年に発売されて以来、幅広い年代の女性が活用しています。
放出された黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を抑制し、薄い状態に保つことで、受精卵の着床を防ぐ仕組みです。
同時に子宮頸管粘液の性状を変化させて精子の侵入も阻むため、適切に装着されている場合は約99.8%と高い避妊率が期待できます。
また、避妊効果だけでなく、月経困難症や過多月経の改善効果もあることが薬剤付加IUDの大きな特徴です。
ミレーナと銅付加IUDの違い

ここでは、比較されることの多いミレーナと銅付加IUDの違いについて、表でまとめて紹介します。
| 比較項目 | ミレーナ(IUS) | 銅付加IUD |
| 素材 | T字型の樹脂製器具に黄体ホルモン製剤を付加 | プラスチック製器具に銅を巻き付けた構造 |
| 薬剤の有無 | 黄体ホルモン(レボノルゲストレル)あり | ホルモン剤なし |
| 子宮への作用 | 子宮内膜を薄く保ち、頸管粘液を変化させて精子が入りにくい状態を作る | 銅イオンによって精子の運動を抑制し、受精しにくい環境を作る |
| 使用目的 | ・避妊・月経困難症・過多月経の改善 | 主に避妊目的 |
| 費用(保険適用か自費診療か) | ・避妊目的は自費診療・月経困難症・過多月経では保険適用となる場合がある | 基本的に自費診療 |
特に大きな違いが「薬剤の有無」です。
銅付加IUDには薬剤成分は含まれていませんが、ミレーナは黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が少しずつ持続的に放出される仕組みになっています。
このため、避妊効果だけでなく月経困難症や過多月経の治療などにも用いられています。
また、銅付加IUDは、T字型のプラスチック本体に銅線を巻き付けており、銅アレルギー及び銅代謝異常がある方は使用できません。
銅付加IUDは2023年3月に製造中止

銅付加IUD「ノバT380」は、2023年に日本国内での製造が終了になりました。
製造中止の背景には、より避妊効果が高く月経関連症状の改善も期待できるミレーナ(IUS)の普及があると言われています。(銅付加IUDは99.2%、ミレーナは99.8%の避妊率)
製造販売元のバイエル薬品株式会社は2024年10月に正式な販売中止を発表しており、これからIUDを検討する方は、ミレーナを医師と相談する流れになっていくでしょう。
(参考:バイエル薬品株式会社『販売中止のお知らせ 高度管理医療機器 子宮内避妊用具 ノバT380』)
ミレーナの効果・特徴

ミレーナは、子宮内膜の増殖を抑える黄体ホルモンの働きを活かして、高い避妊効果と月経トラブルの改善という、2つの効果を同時に得られる点が特徴です。
2014年からは月経困難症・過多月経への保険適用も認められており、ピルを服用できない方や、長期的に避妊と月経関連症状のコントロールを両立したい方にとって、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
以下で、それぞれの効果について詳しく解説します。
高い避妊効果がある
ミレーナは、高い避妊効果が期待できる方法として知られています。
黄体ホルモンの作用によって子宮内膜を薄く保ち、さらに子宮頸管粘液を変化させることで、精子が子宮内へ入りにくい状態を作ります。
99.8%の高い避妊効果に加えて、一度装着すれば最長5年間効果が持続するため、毎日の服薬管理が苦手な方にも向いています。
ただし、性感染症を防ぐ効果はないため、必要に応じてコンドームとの併用も重要です。
月経困難症・過多月経の改善効果がある
ミレーナは避妊だけでなく、月経困難症や過多月経の治療にも用いられています。
黄体ホルモンによって子宮内膜の増殖が抑えられるため、経血量が減少し、生理痛の軽減につながります。
「経血量が多く日常生活に支障がある」「毎月の生理痛がつらい」という方にとって、症状改善が期待できる点はメリットでしょう。
実際に、装着後に生理がかなり軽くなったと感じる方も少なくありません。
ミレーナのメリット

ミレーナは、長期間安定した避妊効果が期待できるだけでなく、生理に関する悩みの改善にも役立ちます。
ここでは、ミレーナの主なメリットについて詳しく紹介します。
高い避妊効果が最長5年間続く
ミレーナは、一度装着すれば最長5年間にわたり高い避妊効果が持続することがメリットです。
5年間という長期間にわたって安定した効果が期待できるため、長期的な避妊を希望する方にも向いた方法です。
抜去すれば妊娠が可能になるため、「将来的に妊娠は希望しているが、今は避妊したい」という方にも選ばれています。
ピルのように飲み忘れの心配がない
低用量ピルは毎日決まった時間に服用する必要がありますが、ミレーナは一度装着すれば効果を発揮するため、飲み忘れによる避妊失敗のリスクがありません。
仕事や育児で忙しい方、毎日同じ時間に薬を飲むのが難しい方、海外出張・旅行が多い方に適した避妊法といえるでしょう。
また、定期検診は必要ですが、毎月薬を処方してもらう必要がないため、通院回数を減らせる点もメリットです。
生理痛(月経困難症)の改善が期待できる
ミレーナのもう一つのメリットが、月経困難症の改善効果です。
子宮内膜の増殖が抑制されることで、生理痛の原因物質であるプロスタグランジンの産生量が減り、結果的に生理痛が軽くなる仕組みです。
鎮痛剤に頼らずに毎月を過ごせるようになり、QOL(生活の質)の向上を実感する方もいます。
経血量が減り過多月経改善にも有効
ミレーナを装着すると、子宮内膜が薄く保たれるため、経血量の減少が期待できます。
過多月経の方では、装着後に「ナプキン交換の回数が減った」と感じるケースも少なくありません。
経血量が減ることで貧血の改善につながるケースもあり、旅行や仕事中の月経管理がしやすくなったと感じる方もいます。
ピルよりも費用を抑えられることがある
ミレーナは装着時にまとまった費用がかかりますが、最長5年間使用できるため、長期的に見ると低用量ピルより費用負担を抑えられる場合があります。
例えば、低用量ピルを5年間服用した場合、自費診療で月2,500〜3,000円×60か月とすると、約150,000〜180,000万円程度の負担です。
一方ミレーナは、自費診療でも約60,000〜100,000円で5年間使用できるため、長期で見ると費用を抑えられます。
また、ミレーナは月経困難症や過多月経の治療目的であれば保険適用になります。
ミレーナのデメリット

ミレーナを安心して使用するためには、メリットだけでなくデメリットについても理解したうえで選択することが大切です。
ここでは、主な2つのデメリットについて解説します。
装着直後に不正出血が見られることがある
ミレーナ装着後、しばらく不正出血が見られることがあります。
これはホルモン環境の変化によるもので、個人差がありますが、3〜6か月ほどして身体が慣れてくることで落ち着くことが一般的です。
特にミレーナの装着直後から2〜3か月くらいは不正出血やおりものの増加が見られることがありますが、少量の出血で臭いにも異常がなければ問題ないことがほとんどです。
ただし、出血量が多い場合や強い腹痛を伴う場合にはミレーナを装着した医療機関で相談しましょう。
まれに子宮穿孔・感染症などのリスクがある
ミレーナでは、まれではあるものの子宮穿孔や感染症、自然脱出などの合併症が起こるリスクがあります。
安全に使用し続けるためにも、定期検診で位置や状態を確認することが大切です。
高村医院では、事前診察や装着後のフォローを丁寧に行い、安全性に配慮した診療を心がけています。
ミレーナとピルはどっちがいい?【比較表】

ミレーナと低用量ピルは、どちらも高い避妊効果が期待できる方法ですが、特徴や向いている方に違いがあります。
| 比較項目 | ミレーナ | 低用量ピル |
| 避妊効果 | 高い(99.8%) | 正しく服用すれば高い |
| 使用期間 | 最長5年 | 毎日服用が必要 |
| 飲み忘れ | なし | あり |
| 生理痛改善 | 期待できる | 期待できる |
| 経血量減少 | 期待できる | 改善することがある |
| 費用 | 初期費用が高め | 毎月費用がかかる |
| 管理の手間 | 少ない | 毎日の服薬管理が必要 |
| 血栓症リスク | ほとんどない | 頻度は低いがリスクあり |
| 妊娠したい場合 | 外せば可能 | 服用中止すれば可能 |
一般的には、「長期間しっかり避妊したい」「服薬管理を減らしたい」という方にはミレーナが向いている傾向があります。
一方で、月経周期をコントロールしたい場合などではピルが適しているケースもあります。
「どちらを選べばよいかわからない」という方は、避妊方法だけでなく、ライフスタイルや月経症状も含めて検討してみましょう。
ミレーナについてのよくある質問

ミレーナを検討している方からは、「痛みはある?」「将来妊娠できる?」「出産経験がなくても使える?」など、さまざまな質問をいただきます。
ここでは、よくある疑問についてわかりやすく解説します。
Q:ミレーナは授乳中も使えますか?
A:授乳中もミレーナの使用は可能とされていますが、産後・授乳中は子宮の壁が薄く柔らかい状態にあるため、子宮穿孔のリスクが通常時より高まることが知られており、当院では、授乳中の方へのミレーナ装着は行っておりません。
Q:ミレーナの装着は痛いですか?
A:ミレーナ装着時には、生理痛のような痛みを感じる方がいます。特に未産婦の方では痛みを強く感じやすい傾向があります。
痛みの感じ方には個人差がありますが、強く痛みを感じる方もおり、局所麻酔や静脈麻酔を用いた装着を選択できる施設も増えてきています。
当院でも静脈麻酔下でミレーナを装着しており、装着後は2〜3時間安静にした後、ご帰宅いただけます。
まとめ
ミレーナ(IUS)は、高い避妊効果が最長5年間持続し、月経困難症や過多月経の改善にも効果が期待できる医療機器です。
ピルのような飲み忘れの心配がなく、血栓症リスクも低いため、40歳以上の方や喫煙者などピルが使いにくい方にとっても有効な選択肢といえるでしょう。
一方で、不正出血やまれな合併症リスクなど注意点もあるため、メリット・デメリットを理解したうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
新宿区四谷三丁目の高村医院では、日本産婦人科学会専門医の院長が一貫して診察にあたっています。
当院では痛みに配慮し静脈麻酔を使用したミレーナ挿入を行っておりますので、避妊方法をお探しの方や月経症状でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
