
ミレーナは高い避妊効果だけでなく、月経困難症(生理痛)や過多月経にも効果的な医療機器です。
SNSや口コミで「ミレーナで生理前のつらさが減った」という声が見られることから、「ミレーナはPMSにも効くの?」と気になっている方もいるかもしれません。
結論からいうと、ミレーナにPMS(月経前症候群)そのものを改善する効果はないとされています。
ただし、月経困難症や過多月経の改善を通じて、結果的に生理前後の体調が整いやすくなる効果は期待できるでしょう。
この記事では、ミレーナとPMSの関係、期待できる効果、低用量ピルとの違いを詳しく解説します。
つらいPMSにお悩みで治療法をお探しの方、ミレーナを使用中であるもののPMSの症状が気になる方は、ぜひ記事を参考にしてみてください。
ミレーナとは

ミレーナは子宮内に挿入して使用する小さなT字型の医療器具であり、正式には「子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG-IUS)」と呼ばれます。
本体から黄体ホルモンの「レボノルゲストレル」が少しずつ持続的に放出され、最長5年間効果が続く仕組みです。
子宮内膜の増殖を抑える働きにより、避妊だけでなく、過多月経や月経困難症の治療にも幅広く用いられています。
低用量ピルのような毎日の服用は不要であり、ホルモン作用が子宮内に限定されるため、全身への影響が少ない点もメリットといえるでしょう。
喫煙者や40歳以上の女性など、ピルの使用に制限がある方の選択肢としても注目されています。
| 項目 | 内容 |
| 正式名称 | 子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG-IUS) |
| 主成分 | レボノルゲストレル(合成黄体ホルモン) |
| 効果持続期間 | 最長5年間 |
| 保険適用 | 過多月経・月経困難症の治療目的は適用(避妊目的は自費) |
PMS(月経前症候群)とは

PMS(月経前症候群)とは、月経が始まる3〜10日前から現れる心身の不調を指し、月経開始とともに軽減または消失するのが特徴です。
はっきりした原因は明らかになっていないものの、主な原因は排卵後の女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)の急激な変動と考えられています。
月経前になんらかの不調を感じている日本人女性は70~80%と多く、そのうち日常生活に支障が出るほど重いPMSの方は、5%ほどだといいます。
| 身体症状 | 下腹部痛、腰痛、頭痛、乳房の張り、むくみ、ニキビ、疲労感 |
| 精神症状 | イライラ、不安感、抑うつ気分、集中力の低下、情緒不安定、不眠 |
なお、精神症状が特に重く、日常生活に大きな支障をきたす場合は「PMDD(月経前不快気分障害)」と診断されることもあります。
(参考:公益社団法人 日本産婦人科学会『月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)』)
ミレーナにPMS(月経前症候群)そのものを改善する効果はない

ミレーナは月経困難症や過多月経には高い効果が期待できますが、PMSの症状そのものを直接改善する作用は、現時点では確認されていません。
PMSの主な原因は排卵後の女性ホルモンの変動ですが、ミレーナを装着していても排卵自体は止まらず、卵巣からのホルモン分泌は通常通り行われるためです。(ごく一部の方で排卵が抑えられるケースもあるといいます。)
(参考:バイエル薬品株式会社『ミレーナ52mgをご使用中のみなさまへ』)
低用量ピルが排卵を抑制してホルモン変動を穏やかにするのに対し、ミレーナの黄体ホルモンは子宮内膜への局所作用が中心となります。
そのため、月経周期に連動して現れるイライラや抑うつ、不安感といった精神症状にはアプローチしづらいと考えられています。
PMS治療を主目的とする場合、第一選択はピルなど排卵を抑える治療法となるのが一般的です。
改善したという人がいる理由
ミレーナはPMSを直接抑える治療ではないにもかかわらず、「装着してから生理前後が楽になった」と感じる方もいます。
これは、PMSと重なって現れる身体的な不調や、月経そのもののつらさがミレーナの作用によって軽くなり、結果的に「PMSが改善した」と実感するためと考えられます。
特に、生理痛の軽減と過多月経による貧血の改善は、女性の生活の質(QOL)に直結する点です。
悪化したという人がいる理由
ミレーナのホルモン作用は局所的で、全身への影響は少ないため、PMSそのものを悪化させる可能性は基本的にはないと考えられています。
しかし、ミレーナの装着後3〜6ヶ月ほどは不正出血や下腹部の違和感が続くことがあり、その身体的ストレスが精神面に影響することはあるかもしれません。
また、ミレーナの添付文書には、まれな副作用として「気分変動(頻度不明)」や「抑うつ気分(5%未満)」が記載されており、わずかではあるものの、気分の変化を感じる方もいるようです。
気になる症状が続く場合は、自己判断で対処せず、装着したクリニックに相談することが重要です。
(参考:バイエル薬品株式会社『子宮内黄体ホルモン放出システムミレーナ®52mg(LNG-IUS)使用の手引き』)
ミレーナで改善が期待できる症状

PMSへの効果は限定的ではあるものの、ミレーナは月経関連のさまざまな悩みに対して効果が期待できます。
ここからは、ミレーナで具体的に改善が期待できる代表的な3つの症状について、メカニズムとあわせて解説します。
| 改善が期待できる症状 | 主な作用機序 |
| 生理痛(月経困難症) | プロスタグランジン産生の抑制による疼痛の緩和 |
| 過多月経 | 子宮内膜の増殖抑制による経血量の減少 |
| 貧血 | 経血量が減ることによる症状緩和 |
月経困難症(生理痛)
月経困難症とは、月経時の下腹部痛・腰痛・頭痛などが日常生活に支障をきたすほど強く現れる状態を指します。
ミレーナは、この月経困難症に対して保険適用が認められている治療法のひとつです。
子宮内膜が薄く保たれることで、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの産生が抑制され、生理痛そのものが和らぎます。
装着後数ヶ月経過すると、鎮痛薬の使用頻度が大幅に減ったと感じる方も多いようです。
低用量ピルでは血栓症リスクから処方しづらい40歳以上の方や、喫煙習慣がある方にとっても、ミレーナであれば検討しやすいでしょう。
過多月経(経血量が多い)
過多月経とは、1回の月経で出血量が140mLを超える、または日常生活に支障が出るほど経血が多い状態を指します。
「ナプキンが1〜2時間でいっぱいになる」「夜用ナプキンを昼間も使う必要がある」「レバー状の塊が頻繁に出る」場合は、過多月経の可能性があります。
ミレーナの黄体ホルモン作用によって子宮内膜の増殖が抑えられると、剥がれ落ちる内膜量が減り、結果として経血量が減少します。
装着1年後には約20%の方が無月経になるとの報告もあり、過多月経に長年悩んできた方のQOL向上につながります。
貧血
過多月経が長期にわたって続くと、月経のたびに鉄分が体外へ失われ、鉄欠乏性貧血を引き起こすことがあります。
鉄欠乏性貧血は動悸、息切れ、立ちくらみ、爪のもろさ、強い倦怠感などが代表的な症状です。
ミレーナで経血量が減少すると鉄の喪失も抑えられるため、過多月経が背景にある貧血の改善につながります。
貧血が解消されることで、日中の倦怠感や集中力の低下の改善も期待できます。
PMSの主な治療法

PMSの治療は、症状の重さ・年齢・妊娠希望の有無・ライフスタイルに応じて、複数のアプローチを組み合わせていくのが基本です。
代表的な治療法は、大きく以下の4種類があります。
- ホルモン療法:低用量ピル・超低用量ピルなどで排卵に伴うホルモン変動を抑える
- 生活習慣の改善:運動、食事、睡眠、ストレスケアによる土台づくり
- 対症療法:鎮痛薬、睡眠薬、利尿薬、抗不安薬・SSRIなど症状ごとの薬物治療
- 漢方療法:体質や症状に合わせた処方によるゆるやかな改善
ミレーナと低用量ピルの効果&メリット・デメリット比較表

「PMSや月経の悩みを軽減したいけれど、ミレーナと低用量ピルのどちらを選べばいいか分からない」と迷う方も多いでしょう。
ミレーナと低用量ピルでは作用範囲や効果、副作用などが異なるため、目的や体質にあわせて選ぶことが大切です。
主要な項目を一覧にまとめました。
| 比較項目 | ミレーナ(LNG-IUS) | 低用量ピル(OC・LEP) |
| 作用範囲 | 子宮内に限定(局所作用) | 全身に作用 |
| 排卵抑制 | 基本的に抑制しない | 抑制する |
| PMS(精神症状) | 効果は期待しにくい | 改善が期待できる |
| 生理痛・経血量の軽減 | 軽減が期待できる | 軽減が期待できる |
| 月経周期の調整 | できない(無月経になることがある) | できる |
| 避妊効果(99.7%) | 約99.8% | 正しい服用で99.7% |
| 持続期間 | 一度装着で最長5年間 | 毎日服用が必要 |
| 血栓症リスク | ほぼなし | わずかにあり |
| 40歳以上・喫煙者 | 使用可能 | 慎重投与または不可 |
| 中止・抜去後の妊娠 | 抜去後すぐに可能 | 中止後すぐに可能 |
| 主な副作用 | 装着初期の不正出血や腹痛、月経周期変化 | 吐き気、頭痛、乳房痛、不正出血、血栓症(まれ) |
| 費用の目安 | 自費:6〜10万円程度保険:1〜1.5万円程度 | 月2,500〜3,000円前後/自費 |
ミレーナと低用量ピル、自分に合っているのはどっち?

ミレーナと低用量ピルは、どちらも月経関連のさまざまな悩みに対応できる治療法ですが、「どちらが向いているか」は目的・体質・ライフスタイルによって分かれます。
ここでは、代表的な6つのシーン別に、ミレーナとピルのどちらが適しているかを紹介します。
自分にとっての優先順位(PMS改善・避妊・痛みの軽減・周期コントロールなど)と照らし合わせながら、参考にしてみてください。
PMS治療が目的の人【ピル】
PMSそのものの改善を主目的とするなら、第一選択は低用量ピルです。
前述の通り、ミレーナは子宮内への局所作用が中心であり、PMSの原因とされる「排卵後のホルモン変動」を抑える働きはないためです。
ピルは排卵を一時的に止めることでホルモン変動を緩やかにし、PMSの身体症状・精神症状の双方に作用する効果が期待できます。
「生理前のイライラ・気分の落ち込みをなんとかしたい」という方は、ピルを検討してみましょう。
生理周期をコントロールしたい人【ピル】
ミレーナは不正出血や無月経になることがあり、生理周期を整える効果はありません。
ピルは服用スケジュールを調整することで、生理日を早めたり遅らせたりするコントロールが可能です。
「旅行や試験、仕事のイベントに生理を重ねたくない」「毎月決まったタイミングで生理が来てほしい」という希望がある方には、ピルが向いています。
体質や年齢でピルを飲めない人【ミレーナ】
ピルにはエストロゲンが含まれているため、血栓症のリスクが高い方、40歳以上、喫煙者、高血圧・糖尿病・肥満などの基礎疾患がある方には処方が難しいことがあります。
一方、ミレーナはエストロゲンを含まず、ホルモン作用が子宮内に限定されるため、血栓症リスクがほぼないとされ、ピルが服用できない方でも使用可能です。
ピルが使えなかった方は、一度婦人科でミレーナについて相談してみるといいでしょう。
飲み忘れが心配な人【ミレーナ】
ピルは原則として毎日決まった時間に服用する必要があり、飲み忘れが続くと避妊効果や治療効果が低下します。
仕事や育児で忙しい方、夜勤や交代制勤務で生活リズムが不規則な方にとって、毎日の服薬管理は意外に負担になるものです。
ミレーナは一度装着すれば最長5年間効果が持続するため、飲み忘れの心配がありません。
より高い避妊効果を求める人【ミレーナ】
ミレーナとピルはどちらも高い避妊効果を持っていますが、わずかにミレーナの方が高くなります。
また、ピルは飲み忘れや下痢・嘔吐などで効果が低下してしまう可能性がありますが、ミレーナは飲み忘れによる効果低下の心配がありません。
ミレーナやPMSについてのよくある質問

ミレーナとPMSに関して、患者様から寄せられる質問と回答をまとめて紹介します。
Q:ミレーナを入れてからイライラが強くなることはありますか?
A:「装着後にイライラが増えた」と感じる方もいるようですが、ミレーナのホルモンは子宮内に限定的にしか作用しないため、イライラを直接引き起こすことは基本的にないとされています。
イライラの背景には、装着直後の不正出血や下腹部痛による身体的ストレスのほか、ミレーナとは無関係の要因が関わっているかもしれません。
タイミング的にミレーナと結びつけて考えてしまいがちですが、別の原因が隠れていないか、医師に相談して一緒に確認してみましょう。
Q:ミレーナは気分の落ち込みや抑うつに関係していますか?
A:ミレーナの添付文書には、まれな副作用として「気分変動」「抑うつ気分」が記載されています。
ただし発生頻度は低く、基本的にはそのような症状が起こることは少ないと考えられます。
装着後に強い気分の落ち込みが長期間続いたり、日常生活に支障が出るレベルになったりした場合は、ミレーナとの関連性も含めて婦人科で相談することが大切です。
Q:ミレーナはPMDDに効果ありますか?
A:ミレーナは、PMDD(月経前不快気分障害)に対する効果は確認されていません。
PMDDはPMSの中でも特に精神症状が強く、日常生活に大きな支障をきたす状態を指します。
主な原因は排卵後のホルモン変動と脳内セロトニン系の関与とされ、第一選択の治療は低用量ピルで、症状に対して抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)・精神安定剤・睡眠導入剤などを使用することがあります。
まとめ
ミレーナは生理痛・過多月経・貧血の軽減を通じて、生理前後の体調改善につながる可能性はあるものの、PMSそのものを直接改善する治療法ではありません。
生理前の落ち込みやイライラといったPMS症状が気になる場合は、低用量ピルの方が向いていることもあるため、自分に合っているのはどちらか、詳しくは医師と相談してみましょう。
新宿区四谷三丁目の高村医院では、日本産婦人科学会専門医の院長が一貫して診察を行っています。
ミレーナのほか、各種ピル(スリンダ・マーベロン・アンジュ・プラノバール)も取り扱っており、一人ひとりの患者様に合ったものをご提案しています。
「ピルとミレーナのどちらが自分に合うか相談したい」「PMSや生理痛のつらさを和らげたい」という方は、ぜひ一度ご来院ください。
