目次
- 初期中絶の重大な後遺症・合併症はまれ
- 中絶手術後に起こることがある症状
- 身体の症状
- 精神の症状(不安・罪悪感・悲しみ・ストレス)
- 中絶後遺症候群(PAS)・中絶後ストレス症候群(PASS)はPTSDの一種
- 中絶手術後の合併症・リスク
- 感染症
- アレルギー反応
- 子宮内腔癒着(アッシャーマン症候群)
- 絨毛遺残・胎盤遺残
- 子宮復古不全
- その他のまれな合併症
- 中絶後は心と体のケアが大切
- 中絶後に医療機関を受診した方がいい症状・受診目安
- 中絶後は妊娠しにくい状態になる?
- 不妊症のリスクは少ない
- すぐに次の妊娠をすることがあり避妊が重要
- 中絶後すぐに妊娠しないために
- 中絶手術とは?当院で行う中絶手術の方法
- 中絶後の症状・後遺症・合併症についてのよくある質問
- まとめ
「中絶後にお腹が痛いけど大丈夫?」
「中絶すると将来妊娠できなくなる?」
「手術を受けてから精神不安定な状態が続いている…」
中絶手術を受けた後や、これから中絶手術を控えているときは、どうしてもこのような不安を感じてしまうものです。
適切な処置が行われれば、初期中絶で重大な後遺症や合併症が起こることはまれだといわれています。
しかし、手術であるためリスクはゼロではなく、また、術後しばらくはさまざまな症状が見られることがあります。
この記事では、中絶手術後にみられる身体的・精神的な症状、医療機関を受診すべき目安、そして将来の妊娠への影響など患者様が気になる点について詳しく解説します。
初期中絶の重大な後遺症・合併症はまれ

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の大規模研究によれば、初期中絶手術後に重大な合併症が発生する確率は0.25%未満とまれで、大腸内視鏡検査と同程度の頻度という結論が出ています。
54,911件の中絶手術のうち、入院・追加手術・輸血を要する重大な合併症は126件にとどまり、外来対応で完結する軽微な合併症を含めても発生率はおよそ2%ほどという結果でした。
適切な体制および医師のもとで行われる初期中絶であれば、深刻な後遺症が残る可能性は低いと考えられるでしょう。
一方、頻度が低くともリスクがゼロではない以上、術後の安静と経過観察が大切です。
(参考:Laura Kurtzman『Archive: Major Complication Rate After Abortion Is Extremely Low, Study Shows』)
中絶手術後に起こることがある症状

中絶手術後には身体面・精神面の両方でさまざまな反応が起こることがありますが、多くは時間経過とともに自然に軽快していきます。
ここでは、身体の症状と精神の症状に分けて詳しく見ていきましょう。
身体の症状
中絶手術後の身体症状は子宮の収縮や麻酔の影響などによる一時的な反応が中心で、多くは1〜2週間程度に落ち着くことが一般的です。
代表的な体の症状・原因・症状が続く期間の目安を表でまとめました。
| 症状 | 主な原因 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 出血 | 子宮内容物の排出・子宮復古 | 1〜2週間 |
| 下腹部痛 | 子宮収縮 | 数日〜1週間 |
| 吐き気・嘔吐 | 麻酔の影響 | 数時間 |
| めまい・頭痛 | 麻酔の影響、緊張や脱水 | 数時間 |
手術後の出血
手術後1〜2週間程度の少量の出血は子宮復古(妊娠前の状態に戻ろうとして収縮すること)に伴う自然な反応で、徐々に量が減少していくことが一般的です。
おりものが混じったような茶色い出血・鮮血・レバー状の塊など出血の仕方、出血量、出血期間は個人差があり、人によってさまざまです。
出血が止まらない、出血量が多い、出血が長期間続くといった場合は、できるだけ早く医療機関に相談しましょう。
下腹部の痛み
中絶後は、子宮が元の大きさに戻ろうと収縮する子宮復古によって、生理痛のような下腹部痛が数日〜1週間程度続く場合があります。
下腹部痛は子宮の自然な回復過程で生じる反応であり、痛みの強さや持続期間には個人差が見られるものの、処方される鎮痛薬を飲むことで対処できることがほとんどです。
ただし、痛みが日に日に強くなる、鎮痛薬が効かない、発熱を伴うといった場合は合併症の兆候も疑われるため、自己判断せず速やかに医療機関へ相談しましょう。
吐き気・嘔吐
術後の吐き気・嘔吐の多くは麻酔の副作用として現れる症状で、時間経過とともに自然と軽快していくのが一般的です。
麻酔が効きやすい方に見られ、30分程度で治まることが多いですが、術後しばらくは飲食は控え、吐き気が落ち着いてからにしましょう。
当院では、吐き気対策のため、吐き気が起こりにくい麻酔薬を使用し、術後の点滴に吐き気止めを入れています。
めまい・頭痛
それほど多くの方に見られる症状ではありませんが、麻酔などの影響によってめまい・頭痛が見られることもあります。
麻酔が効きやすい方の場合、めまいが起こりやすい傾向にあるようです。
麻酔が覚めてから30分ほどで解消されることがほとんどですが、めまいがあるうちは歩いたり立ったりせず、安静に過ごしましょう。
当日は運転はできないため、公共交通機関を使うか、お迎えを頼んでおくといいでしょう。
腹痛・発熱・不正出血が続く
腹痛・38度以上の発熱・大量または長引く不正出血が続く場合は、合併症が疑われるため、早急にご相談ください。
また、これらの症状に当てはまらなくても、気になったことや不安があれば、自己判断するのではなく、医師に相談することが大切です。
精神の症状(不安・罪悪感・悲しみ・ストレス)
中絶手術後は、身体だけでなく心もダメージを受けている状態です。
不安や罪悪感、喪失感、悲しみ、ストレスなどによって、一時的な気分の落ち込みや情緒不安定が起こることがあるでしょう。
回復のペースは個人差(体調や周囲の環境など)が大きく、数日で落ち着く人もいれば、数か月ほど気持ちが不安定な状態が続くこともあります。
日常生活に影響するほどつらい場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
中絶後遺症候群(PAS)・中絶後ストレス症候群(PASS)はPTSDの一種

中絶後遺症候群(PAS)・中絶後ストレス症候群(PASS)とは、中絶後の後遺症として起こることがある精神的な不調のことです。
医学的に正式な病名として認められているわけではないものの、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種と考えられています。
中絶という経験はとても大きな決断で、心が揺れるのはごく自然なことです。
手術前から続いていた不安や葛藤、ホルモンバランスの変化による気分変動などが重なって、不安定になりやすくなります。
中絶後遺症候群を放置すると精神疾患を発症するリスクが高まるとされているため、以下の代表的な3つの症状が続く場合は、婦人科や心療内科などで相談しましょう。
| 症状 | 主な特徴 |
|---|---|
| 過剰反応 | ・イライラしやすくなった・不眠気味になる・過剰な警戒心を抱く・集中力が低下する・孤独感を感じる |
| 抑圧 | ・中絶についての感情を押し殺す・中絶に関連する人や場所を避ける・赤ちゃんや子どもを避ける・自殺企図や自殺願望 |
| 侵害行為 | ・中絶手術のことがフラッシュバックする・悪夢を見る・うつ状態になる |
心に受ける影響には個人差がありますが、中絶した経験自体が精神疾患の原因になるという一貫した証拠はないとされています。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校が行った調査によれば、中絶後5年間のうちに「中絶は自分にとって正しい決断だった」と解答した人が95%以上だったことがわかっています。
一方、望まない出産では長期的な悪影響が指摘されており、一人で抱え込まず、できるだけ早く一度医療機関や専門窓口で相談することが大切です。
(参考:Dan Fost『UCSF Turnaway Study Shows Impact of Abortion Access on Well-Being』)
中絶手術後の合併症・リスク

中絶手術によって重大な合併症が起こることはまれですが、リスクはゼロではないため、どんなリスクがあるのかを知っておくことが大切です。
感染症
中絶手術後は一時的に子宮頸管が広がっているため、通常より細菌が入り込みやすい状態にあり、まれに感染症が起こることがあります。
もともとクラミジアなどの性感染症がある場合は骨盤腹膜炎などの感染症リスクが高まるため、多くのクリニックでは事前のおりもの検査や血液検査で確認し、必要に応じた処置を行っています。
「術後に38度以上の熱が下がらない」「下腹部の痛みが日に日に強くなる」と感じたときは、迷わずクリニックへ連絡しましょう。
アレルギー反応
まれに、中絶手術中に使用する麻酔や他の薬剤に対してアレルギー反応(蕁麻疹、呼吸困難、アナフィラキシーショックなど)が起こることがあります。
手術前の問診でアレルギーや持病の有無について医師から質問されるため、心当たりがある方は事前に詳細を伝えましょう。
子宮内腔癒着(アッシャーマン症候群)
子宮内腔癒着(アッシャーマン症候群)は、子宮内膜が傷ついて子宮の内腔同士が癒着する病気で、不妊や無月経の原因になる可能性があるものの、現代の中絶手術では発症はまれです。
絨毛遺残・胎盤遺残
絨毛遺残・胎盤遺残とは、胎盤や卵膜などの組織の一部が子宮内に残ってしまう状態で、大量出血や感染症の原因になることがあります。
術前の超音波検査で子宮の状態を詳しく確認する・丁寧な手術を行う・術後にも検診で遺残の有無をチェックするなどにより、防止に努めます。
子宮復古不全
子宮復古不全(子宮収縮不全)は、妊娠で大きくなった子宮が術後にうまく元の大きさへ戻らず、出血が続いたり子宮の収縮が悪くなったりする状態です。
原因としては、胎盤や卵膜の遺残・子宮内感染(子宮内膜炎)・子宮筋腫・母体疲労などがあります。
その他のまれな合併症
上記以外にも、子宮内膜や子宮頸管の損傷・子宮穿孔・大量出血といった合併症がありますが、これらが起こることは非常にまれです。
中絶後は心と体のケアが大切

中絶後は身体の回復だけでなく、心のケアもとても大切です。
中絶手術を経験したあとは、身体だけでなく心にも大きな負担がかかっている状態のため、一人で抱え込まず、家族・パートナー・友人、または医師や看護師に、不安や悩みを話してみましょう。
中絶後に医療機関を受診した方がいい症状・受診目安

「これくらいなら大丈夫かな」「忙しいからもう少し様子を見よう」と我慢してしまうと、合併症の発見が遅れてしまう可能性があります。
以下は、中絶後に医療機関を受診したほうがいい目安となる症状です。
- 出血の量が多い(1時間でナプキンがいっぱいになってしまうなど)
- 出血が長期間続く
- 強い腹痛がある(鎮痛薬が効かない、日に日に強くなる)
- 発熱がある(38度以上が半日以上続く)
- 精神症状がつらく、日常生活に影響している
これ以外でも、気になる症状があるときは遠慮なく医療機関へ相談しましょう。
中絶後は妊娠しにくい状態になる?

中絶手術を受けることで、将来妊娠の機会を逃すかも…と心配する方は多いです。
しかし、適切に行われた1回の中絶手術が妊娠の確率に大きな影響を与えることはほとんどないとされています。
ただし、妊娠には個人差があり、中絶手術後に必ず妊娠できるとは限りません。妊娠を検討する場合は、慎重に計画を立てて、パートナーと相談して行いましょう。
不妊症のリスクは少ない
「中絶すると不妊になる」という噂がありますが、一貫した科学的根拠はなく、1回の中絶手術が直接の原因で不妊になるリスクは極めてまれとされています。
「中絶後に妊娠しにくい」と感じる場合には、別の婦人科疾患が背景にある可能性があるため、一度婦人科で相談してみましょう。
すぐに次の妊娠をすることがあり避妊が重要
意外に思われるかもしれませんが、中絶後すぐの身体はむしろ妊娠しやすい状態にあるとされています。
これは、中絶手術後に性行為を再開できる時期(2週間頃)が排卵時期と重なる可能性が高いためです。
避妊せずに性行為を行うと、次の生理を待たずに妊娠してしまうケースもあるため、妊娠を望まない場合はしっかりと避妊を行いましょう。
中絶後すぐに妊娠しないために

中絶後、すぐに妊娠するリスクを減らすためには、効果的な避妊方法を利用することが重要です。
当院では、低用量ピルの処方やミレーナ(子宮内避妊システム)の挿入も行っております。詳しくは下記からご確認いただけます。
中絶手術とは?当院で行う中絶手術の方法
中絶手術は、妊娠を中断するための外科的な手術のことを指します。
中絶はさまざまな理由で選択され、法的に認められています。中絶手術には異なる方法と種類があり、選択肢は患者様の状況と妊娠の段階に応じて異なります。
当院では、WHOが安全性を認めて推奨している「吸引法」という手法で手術を行っています。
中絶後の症状・後遺症・合併症についてのよくある質問

ここでは、中絶後によく寄せられる不安や疑問についてお答えしていきます。
中絶をすると流産しやすくなりますか?
A. 適切に行われた初期中絶手術が原因で、その後の妊娠で流産・早産しやすくなることはまずないとされています。
中絶したことが親や彼氏(パートナー)にバレることはありますか?
A. 中絶手術は基本的に自由診療のため健康保険の受診歴に記録が残らず、本人が口外しない限り親やパートナーに知られる可能性は低いといえます。
ただし未成年の場合は原則として親権者の同意書が必要になるため、その時点で家族に話す必要があります。
中絶後は跡が残りますか?
A. 中絶手術はメスを使わない手術のため傷跡は残らず、子宮内膜が回復すれば医師が見ても中絶歴を判別することは難しいとされています。
ただし、手術直後の子宮内膜が回復しきっていない時期に他院で婦人科検査を受けた場合「中絶手術を受けたのかな」と推測される可能性はあるでしょう。
中絶後の精神不安定はいつまで続きますか?
A. 精神不安定の期間には個人差がありますが、多くは時間とともに少しずつ落ち着いていくとされています。
症状には個人差があるものの、目安として2週間以上強い症状が続くときは専門家へ相談しましょう。
中絶後に性格が変わることはありますか?
A. 中絶後は、ホルモンバランスの変動やストレスの影響で一時的にイライラ・無気力・無感情などの変化が起こることがありますが、多くは時間とともに元に戻っていくとされています。
違和感が長引くときは、我慢せず婦人科や心療内科で相談することが大切です。
まとめ
中絶手術は身体的にも精神的にも大きな決断ですが、重大な合併症や後遺症が生じたり、妊娠しにくくなるといったことは非常にまれなケースです。
術後にみられる出血・腹痛・吐き気・めまい・疲労感などの症状は子宮の自然な回復過程で生じるもので、多くは1〜2週間ほどで落ち着いていきます。
新宿区の四谷三丁目駅からすぐの場所にある高村医院では、痛みを考慮した麻酔法を採用し、身体への不安をなるべく軽減した方法での中絶手術を行っています。
妊娠を希望されない方には低用量ピルの処方やミレーナの挿入も行っていますので、不安なことがあればお一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
